今年は年始から大きな地震もあり、石川県はまだまだ復興の途中です。被災した石川県の皆さまが少しでも早く日常を取り戻せるよう、また、亡くなられた方々のご冥福をお祈りしますとともに、ご家族の皆さまが少しでも明るい気持ちで過ごせるよう心よりお祈り申し上げます。
郷土料理とはその風土や歴史を反映し、独自の味わいで作る料理の事です。石川県はその大半が海に面しており、また越前甲や白山など山々にも囲まれています。そのため、海産物や農産物も盛んです。この記事では、石川の代表的な料理であるいしる鍋、いさざ、じぶ煮、かぶらずしについてご紹介します。
石川県は大きく分けて能登地区と加賀地区に分かれており、日本海に突き出ている能登地区、日本海と山に囲まれた加賀地区によって、その地形を活かした特産物がたくさんあります。特に有名なのは能登地区の海鮮ですが、30年以上前から能登地区の宝達志水町以北で栽培されている能登野菜や、80年以上前から加賀地区の金沢市で栽培されている加賀野菜も忘れてはいけません。
能登地区
いしる鍋
いしる鍋は、石川県で冬の季節に愛される郷土料理の一つです。その名前は、鍋に使用される特別な調味料「いしる(いしり)」から来ています。
いしる(いしり)は、能登地区に伝わる魚醤で、富山湾の内浦側と外浦側で作られている原料が異なり、内浦側は真イカの内臓を発酵させて作り、「いしる」と呼ばれ、外浦側ではイワシやサバなどの魚を発酵させて作られたものが「いしり」と呼ばれています。
魚を発酵させて作る魚醤は日本には他にもありますが、真イカの内臓を発酵させて作る魚醤は能登町独特の作り方だそうです。
ちなみにこの地域で作られるいしる(いしり)は、日本三大魚醤の一つとして知られています。
この特別な調味料は、いしる鍋に独特の風味と深いコクを与えます。その味わいは、タイのナンプラーやベトナムのヌクマムとは異なり、魚特有の臭みや塩味が少なく、料理にさりげなく風味をプラスします。石川県の冬の夜には、いしる鍋が心と体を温めてくれます。
いしる鍋の特徴は、いしるの深い味わいと豊かな旨みにあります。
その割に作り方はとてもシンプルなのも驚きです。
まず白菜や椎茸など、魚介や肉類より先にいしると水(昆布出汁)で具材が柔らかくなるまで煮込み(10分程)、魚介類、お肉類を入れて5分煮込んで完成です。
いしると水(昆布出汁)の割合が大事
1人前だといしる15ml:水(昆布出汁)225mlが一番バランスがいい感じで作れます。あとは人数に合わせて、いしる1:水(昆布出汁)15を守って作るようにしてくださいね。
いしるを使った料理で鍋以外にも、ホタテの殻を器にして作った「いしるの貝焼き」や、好きな野菜をいしると水で漬け込んだべん漬けなどのお漬物も有名です。
石川県の冬の食卓を彩る風物詩、「いしる鍋」
地元の人々にとって大切な食文化の一部です。石川を訪れた際には、ぜひ地元の味を堪能してみてくださいね。
いさざ料
能登半島は、日本海に面した地域であり、新鮮な海の幸が豊富に恵まれています。その中でも、特に知られるのが「いさざ料理」です。いさざは、能登半島周辺で獲れる体長5cmほどのハゼ科の魚で、赤茶色で透き通っているのが特徴の魚です。
いさざは春告魚とも呼ばれ、能登地区の春の風物詩でもあります。四つ手網を使った伝統漁法でとるいさざは3月初旬から始まります。3月限定で味わえる踊り食いは是非一度は試してほしい貴重な食べ方です。
酢醤油にそのままいさざを入れて食べる。それだけなんですが、とても勇気が必要な料理です。抵抗を感じられる方は無理はせず。
筆者が食べた感想は、いさざの甘くて少し苦い味と酢醤油の味に、活きのいい、ぴちぴち口の中で跳ねる感触、噛むとコリコリしていて、そのまま飲み込んでもよしという、ドキドキする感覚にいさざの旨みが合わさって独特な体験でした。
4月以降からはいさざも少し大きくなり、料理の幅も広がります。くせの無い味なので、卵とじや唐揚げ、汁物、茶碗蒸しなどいろんな料理を楽しめます。
一般的な日本の食文化にはあまり知られていないかもしれませんが、いさざ料理は地元の人々にとっては大切な食の一部であり、観光客にも喜ばれる郷土料理です。能登半島を訪れた際には、ぜひ地元の味を楽しむためにいさざ料理を試してみてください。その豊かな風味と新鮮な旨みに感動することでしょう。
加賀地区
じぶ煮
石川県の郷土料理である「じぶ煮(治部煮)」は、鴨肉に季節の野菜を醤油ベースの出汁で煮込んだ料理です。この料理の名前の由来には諸説あり、人名由来説や、じぶじぶと煮る説、ロシア人が伝えた説と様々です。
じぶ煮は、小麦粉をまぶした鴨肉を使っており、とろみのついた煮汁と、鴨肉によって体がぽかぽかと温まります。そのほかの具材には、加賀の特産品である「すだれ麩」を使っています。すだれで巻くことで凹凸ができた麩に煮汁がしっかりと染み込み、じぶ煮には欠かせない具材となっています。また、鴨肉を鶏肉などで代用したり、季節によっては魚介類で煮込むこともあり、地域や季節によっていろいろな味を楽しむことができます。
おもてなし料理とされているじぶ煮は、家族や友人とのふれあいの場にも使われます。寒い冬の夜に、ほっこりと体を温めることから、地元の人々にとってはなじみ深い料理です。
かぶらずし
石川県加賀地区の伝統料理である「かぶらずし」は、塩漬けにしたかぶらで、塩漬けにした寒ブリを挟み、糀で作った甘酒を乗せて10日程寝かせて作る料理です。
かぶらずしの由来は古く、寒ブリが石川県の冬の海で水揚げされる時期に合わせて食べられてきました。また、一般家庭においてはブリは高級魚のためニシンで代用され、大根ずしと呼ばれています。
かぶらずしは、見た目も美しく、食べると大根の爽やかな食感と風味、寒ブリのとろっとした深い旨みが口いっぱいに広がります。
この料理は、加賀ブランド野菜の加賀大根を使用し、出世魚とされているブリを使っている為、特に正月やお祝い事などの特別な日に食べられることが多く、地元の人々にとっては欠かせない存在です。石川県を訪れた際には、ぜひ地元のかぶらずしを味わってみてくださいね。その風味豊かな味わいと伝統を感じることができるでしょう。
まとめ
今回は石川県の『代表的な郷土料理』についてご紹介しました。
石川県の地形や風土を反映した郷土料理は他にもまだまだ沢山あります。今回は能登地区のいしる鍋やいさざ料理、加賀地区のじぶ煮やかぶらずしに限定してご紹介しました。どれも地元の食文化を感じさせる贅沢な一皿です。石川を訪れる際には、地元の味を是非楽しんでみてくださいね。その風味豊かな料理が、旅の思い出に彩りを添えることでしょう。